王太子様の暗殺未遂事件は瞬く間に王宮や世間に広まり、それを救ったのは話題の黒の乙女だったことも広まった。

また毒物にも迅速に対応して治癒したことから、「癒し姫」という新たな二つ名がついた。

癒しの術が上手くいっていることも大きく、学園や騎士団の鍛錬場で度々ケガ人に治癒をしていたために黒の乙女より段々と癒し姫の二つ名の方が定着してきた。

そんな頃、とうとう東と西から戦を仕掛ける宣誓書が送られてきて、戦争が避けられない事態になってきてしまった。

イベルダにも四季があり、私が来た春から数ヶ月が経ち、季節は夏の終わりになっていた。

「戦は西の国との国境でか……」

西の国境は私が転移してきた時に、初めていた村の近く。

私にとって記憶に残る土地だ。

西の国境砦も、辺境騎士団の面々も元気だろうか。

この前の戦からまだ回復しきれていないだろうに、またそこで争うことになるとは。

私はあの砦にいた人々を思い出して、どうしたものかと思っていた頃、再び王宮への召集令状が私の元にやってきたのだった。

私は、シャロンさんを連れて王宮へとやってきた。

宣誓書が届き戦の準備が進んでるからか、前回の王太子様暗殺未遂の時以上に、王宮はピリピリとした空気になっていて気分が重くなる。