紅音は優しいから、小田原家でみんなで食べる分厚いステーキのほうが何倍も美味しいと言っていたけれど……。
 俺にとっては紅音の作る料理のほうが好きだ。愛のこもり方が違う。ちゃんと俺のために、俺の体のことを考えて作ってくれるから。

「あの、爽太さん」

「ん?」

「今日、新しい掃除機が欲しいんですけど……」

 と、紅音は遠慮がちに言ってきた。

「新しい掃除機?」

「はい。長く使っているものでしたので、昨日壊れてしまいまして……。それで新しい掃除機を買いたいんですけど、買ってもいいですか?」

 紅音は何か必要なことや必要なものがあると、必ず俺に許可を取る。

「当たり前だろ?俺に許可なんか取らなくていい。夫婦なんだから、必要なものがあれば何でも言ってくれていい」

「ありがとうございます」

 俺をしつつ微笑み紅音。俺はそんな紅音の笑顔にいつも、癒やされている。……こんなこと言うと恥ずかしいから、紅音には内緒だけど。

「俺の財布渡しておくから、これで好きなのを買うといい」

「え、い、いいです! 自分のお金で……」

「いいから、俺のを使え」