「結構食べたな?」

「はい。お腹いっぱいになりました」

「美味そうに食べてたもんな、紅音」

 そんな爽太さんが向ける笑顔にわたしは、少しだけ不思議な気持ちになった。
 爽太さんと一緒にいると、とても楽しい。幸せだなと感じる時もある。
 こんなこと感じるなんて、あまり良くないのかもしれないけど……。

 だけどわたしは、爽太さんのこととてもいい人だと思っている。こんなわたしを拾ってくれて、借金を全額返済してくれて……。
 2年間という期間限定だけど、わたしは今爽太さんの妻になれて良かったと思っている。
 だって爽太さんがいなければわたしは、今頃どうなっていたのか分からないから……。

「……あの、爽太さん」

「ん?どうした?」

「爽太さん……」 

 わたしを見つめる爽太さんのその目に吸い込まれるかのように、わたしは一歩ずつ爽太さんに近付いていた。
 そして爽太さんのその唇に、吸い込まれたかのようにそっと唇を重ね合せていた。

「……え?」

「あ……!す、すいません!わたし……!」

 わ、わたしってば、なんてことを!いきなりキスするなんて……!