「はい。分かりました」

 そう答えたわたしは、腕時計にふと視線を向けてみる。

「はい。加古川です」 

 するとその時、加古川先生のスマホが鳴り響き、加古川先生はすぐに電話に出た。

「分かった、すぐ行く。すぐにアドレナリンの用意と挿管の準備しておいてくれ。 後、心電図の用意もだ……!」

 電話を切った加古川先生は、わたしに「すみません。急患なので失礼します」と言って走り出してしまった。

「加古川先生、忙しそうだな……」

 加古川先生はとても腕のいいお医者さんだし、テレビにも最近は引っ張りだこだし、美乃梨さんも大変そうだな……。
 なんて思いながらも、少しだけ二人のことが羨ましくも感じた。

 わたしは通り沿いのスーパーに寄って夕飯の買い物を済ませてから、家に帰って夕食の用意を始めた。
 そして【今日の夕食は、久しぶりに肉じゃがにしますね】と爽太さんにメッセージを送り、ジャガイモの皮をピーラーで剥き始めた。

 最近までつわりがひどくてなかなか食事を取れなかったわたしに、爽太さんはいつもゼリーを買ってきてくれた。
 その優しさが嬉しかったんだよね……。