そう言われたわたしは「はい。分かりました」と答えた。

「……そういえば小田原、ウィーンに行くって聞きましたけど」

 そして唐突にそう切り出されたわたしは、こう答えた。

「はい。……一年だけ、ウィーンに行くって」

「そうですか……。寂しく、なりますね」

 きっと加古川先生も、爽太さんに会えなくなるのが寂しいんだろうな……。
 なんとなく加古川先生が、そんな寂しそうな表情をしているような気がした。

「いえ、寂しくなんてないですよ」

 だけどわたしは、笑顔でそう答えた。

「え?」

「だってわたしたちには、子供という素晴らしい愛の結晶が出来ましたし……。この子のために、わたしたちは今こうして一生懸命親になろうと頑張っていますから。……それに夫がウィーンから帰ってきたら、この子をたくさん可愛がってもらうつもりなので」

「そうですか。じゃあ小田原には、紅音さんより何倍も子育て頑張ってもらわないとですね」

 加古川先生に笑顔でそう言われたわたしは「はい。もちろん、そのつもりですよ」と答えた。

「小田原に、頑張れって伝えておいてください」