なんて規模の大きい話をするんだろう。
その時の俺にとっては、サッカーが、レギュラー入りすることが全ての世界だった。だから、全然「そんなこと」ではなかったのだけれど、彼女に叱られて、思わず笑ってしまったのは紛れもない事実で。

でも、思い返せばここがターニングポイントだった。
自分はサッカーが好きだけれど、サッカーは自分のことを好きじゃない。俺には向いていない。このままやめてしまおうかと、一人悩んでいた。

高校になってもサッカーを続けたのは、あの時、彼女が「大丈夫」と言ってくれたからだ。
また新しく頑張ればいい。生きてればラッキー。前よりも軽い気持ちで、俺はまた、サッカーに向き合えるようになった。

ありがとう、と。ちゃんと彼女に伝えられれば良かったのに。


『大丈夫だよ』


夏休み、お墓の前で座り込んだ時、彼女の声が聞こえた気がした。風が吹いて、目の前にあの日と同じ、無邪気な笑顔が俺を見つめているような気がした。


『霧島くんに出会えたことが、私の人生で一番のラッキーです。』


俺はそんな大層なことを言ってもらえるような人間ではないけれど、いつかの俺を救ってくれたように、俺も彼女を救えていたのなら、それはとても喜ばしいことだと思った。