この夏、やり残した10のこと



一年前の夏の日と同じように、霧島くんは、また泣きながら「ごめん」と零す。
私はやっぱり、彼がどうして謝っているのか、さっぱり分からないのだ。


「俺が……俺のせいで、あんなに学校、」


断片的に、しゃくりあげながら、霧島くんが呟いている。


「霧島くん、違うよ」


何となく、彼の言いたいことが分かった。

私は高校に入ってから、しばらく無理をして学校に毎日行っていた。しばらく、といっても、二週間も続かなかったけれど。
だって、楽しかったの。霧島くんに会いたかったの。私が勝手にしたことだから、霧島くんが責任を感じる必要なんて、何一つないよ。

彼は私に、「特別」をくれたわけでは、決してない。むしろ、「普通」を与えてくれた。
誰にでも分け隔てなく。それがたとえ問題児なクラスメートでも、私みたいな扱いづらい病弱なクラスメートでも。霧島くんは絶対に、特別扱いをしなかった。


「俺があんなこと、言わなきゃ……」


出雲は今も、生きてたのに。
喉の奥から絞り出すようにそう言って、彼がその場にしゃがみ込む。