――霧島くんが、泣いている。彼の両目から透明の粒が零れてきて、メモ帳に落ちて、染みができた。
『霧島くんへ
初めて話した時のことを、覚えていますか。
霧島くんにとっては、どうってことないのかもしれないけれど、私はよく覚えています。
本当は学校に行きたくないなと、その日の朝、思っていました。緊張して、早く帰りたいなと思っていました。
でも、霧島くんが話しかけてくれて、すごく嬉しかったです。私が病気だと知っても普通に接してくれて、嬉しかったです。
霧島くんのおかげで、もっと学校に行きたいと思えるようになりました。本当に、ありがとう。
霧島くんに出会えたことが、私の人生で一番のラッキーです。』
五ページくらいの空白を挟んでこっそり書いていたものだったけれど、お母さんにも薫にも、見つかってしまったみたい。まさか本人の目に触れると思っていなかったから、結構大胆な言葉を連ねてしまっている。
本当は、直接伝えるつもりだった。最後に一回、学校へ行ける日があったら。霧島くんに会える日があったら。その時のために言いたいことを書き留めておいたのだ。
「……い、づも、出雲、ごめんっ……」



