――中学三年生の春。それが霧島くんと、最初に話した時の記憶。
二度目は、同じ年。夏休みに入る前の、最後の日だった。
終業式は保健室で過ごして、そのあと職員室で先生からプリントを受け取る。
体調はどうか、高校はどうするのか。軽くそんな話をして、私は教室へ向かった。机の中に、ペンケースを入れたままにしてきてしまったから。
早速遊びに行く人や、部活に精を出す人。様々だけれど、既に廊下は閑散としていた。教室にもきっと、誰もいない。
だから、教室へ足を踏み入れた時、人影を見つけて驚いた。
「……くっ、」
窓際で苦しそうな呻き声を漏らし、背中を震わせている。それが、霧島くんだった。
「だ、――大丈夫!?」
咄嗟に声を掛けた私に、彼の肩が跳ねる。振り向いた頬は、涙で濡れていた。
「……あ、え、っと」
目を見開いて、彼が呆然と唇を動かす。慌てたように目を擦り、霧島くんは「ごめん」と零した。
どうして彼が謝ったのか、私にはさっぱり分からなかった。
「出雲、か……はは。ごめん、びっくりしたよな」
乾いた笑い方。取り繕ったそれに、返す言葉がない。
具合が悪いのかと思って声を掛けたけれど、そういうわけではなさそうだ。ひとまず、胸を撫で下ろす。
「どうか、したの?」



