「お姉ちゃん、」
前に一度、大喧嘩をした時があったよね。
お父さんもお母さんも私につきっきりだから、お姉ちゃんはその分、一人で我慢しなきゃいけないことがいっぱいあった。
私はお姉ちゃんみたいな人に、なりたかったよ。
そう言ったらお姉ちゃんはますます泣いて機嫌が悪くなっちゃったけれど、でも私は昔も今も、ずっとそう思っている。
「お姉ちゃん、ごめんね。ありがとう」
誰からも返事はない。当たり前だ。それでいい。
私の体を送り出す時、みんながたくさん話しかけてくれたこと、知ってるから。
家族三人の後ろで、手を合わせる四人に、視線を移す。
私がこの夏にやりたいことの九つ目は、「友達に感謝を伝えること」。
「みんな、私と友達になってくれて、一緒に遊んでくれて、ありがとう」
一人が好きなのかと思っていた、本当は友達が欲しいと言った、雫。
面倒くさそうにしていたけれど、絶対に断らない、優しい近江くん。
二人とは、もっと早く話していれば良かったなあって、私も思うよ。でもね、まるで私が一緒にいるのが当たり前みたいに振る舞ってくれるから、全然寂しくなかった。
「薫」