電車が停まる。目的の駅に着いたようだ。

ホームに降り立ち顔を上げると、私たちを待っていたのか、そこには既にお父さんとお母さん、それからお姉ちゃんがいた。
お洒落なサンダルが、ゆっくりと一歩ずつ近づいてくる。


「……薫ちゃん、ありがとうね」


薫の顔を覗き込むように、お姉ちゃんは弱々しく微笑んだ。ぶんぶんと勢いよく首を振った薫が、涙の粒を撒き散らす。

それから、緩やかな坂道を歩き出した全員の背中。友達と家族が一緒にいるのを見るのは、お葬式以来だ。
私のお墓は丘の上にある。見晴らしが良くて、私たちが先程まで遊んでいたはずの海も展望することができるのだ。

お父さんが墓石に水をかけ、お母さんがお花を添える。お姉ちゃんは、果物とお菓子をお供えしてくれた。具合が悪い時、いつも真っ先に食べたいと言った桃。先生からあんまり食べ過ぎちゃだめだよ、と注意されたチョコレート。

ろうそくとお線香が立って、各々の背筋が伸びたのが分かった。
丁寧に合わせられる両手と、おりる瞼と、横顔に射す夕陽。清廉な沈黙が流れる。

私がこの夏にやりたいことの八つ目は、「家族に感謝を伝えること」。
目の前の三人に向けて、口を開いた。


「……お父さん、お母さん、お姉ちゃん。私、友達たくさんできたよ」