静かに電車に揺られていた。流れていく外の景色を眺めているのは私だけのようで、みんなはただただ俯いている。

少しずつ空が夕焼けに侵食されていく、黄昏時。
さっきまでいた砂浜の喧騒は、もうすっかり消え失せてしまった。海からの帰り道、その足で私たちは、また違う場所へ向かう。

薫はもうずっと、泣き続けていた。泣いて泣いて、泣き腫らして、今は肩を震わせながら、じっと目を閉じている。


『遥香がやりたかったこと、全部、私が叶えます』


泣かないでよ。薫は本当に、全部叶えてくれたじゃない。私一人じゃ、生きていたとしても絶対に叶えられなかったことを、全部。

これまで明るく元気に振舞っていた彼女が急に泣きじゃくるから、他のみんなはどうしていいか分からずに戸惑っているようだった。いや、泣いている理由はもちろん分かっているのだろうけれど、なんて声を掛ければいいのか考えあぐねている、と言った方が正しいかもしれない。

でも、本当はちょっとだけ嬉しいよ。薫はあの日から一度も泣かなかったから、私のこと忘れてしまったのかな、なんて、そんなわけはないのに、不安になる時もあったんだ。

薫に手を伸ばす。もちろん触れられるわけもなく、私の指は宙を掴んだ。