メモ帳の表紙には、そう書いた。

夏は、私の体にとって一番苦手な季節。運動もままならないのに、暑い中、遊びに行くなんてできっこない。他の人たちがテレビの中で楽しそうに夏休みの予定を語るのを、ただ羨ましがることしかできなかった。

でも、これが最後の夏だ。やりたいことをする。本気で楽しむ、最初で最後の、夏。

たくさん友達をつくりたい。
その友達と、帰り道にアイスを食べに行きたい。
ラジオ体操に行きたい。
星を見に行きたい。
お祭りに行きたい。
花火をしたい。
海に行きたい。

思いつく限り書き出して、満足する。しばらくその文字列を眺めて、またペンを握った。

お父さんとお母さんとお姉ちゃんに、ありがとうって言いたい。
友達に、ありがとうって言いたい。

どうせなら、と思って付け加えたけれど、これじゃあ本当に、近々死んでしまう人みたいだな、と苦笑する。
ううん。いつ死んでもいいように、後悔はないように。そうする必要が、私にはあった。――だから、最後にもう一つだけ。

霧島くんに、ありがとうって言いたい。

眩しくて朗らかで、爽やかな人。たった一言で、私の世界を変えてしまった人。
彼にだけは、どうしても、伝えたかった。

そこまで書いたところで薫がやって来たから、咄嗟に隠してしまったけれど。彼女が大切に持っていてくれたと知って、安心した。