うんざり、といった顔で担任の先生の文句を並べる彼女の声を聞きながら、段々と眠くなってきてしまった。我慢しつつも、少しずつ瞼が下がってくる。

たとえ寿命を削っても何でも、私は学校に行きたい。以前の自分なら、絶対に思わなかったことだ。
もう失くすはずだった命を、神様が引き延ばしてくれた寿命を、どう使うか。

これからも元気で健康で、長生きする。家族はみんな望んでくれているけれど、それが無理なことであるというのは、何より、自分がよく分かっていた。
きっと私の人生は長くない。残り僅かな時間を、どうせなら有意義に過ごしたいと思うのだ。


「遥香、聞いてる?」


ああでも、ちょっと無理しすぎたのかな。何だかすごく、眠たいや――。


「遥香? 遥香!」


薫が呼んでる。返事をしなきゃ。
頭の中で必死に、聞いてるよ、と繰り返す。

薫が何度も何度も、私の名前を呼んでいた。水の中にゆっくりと沈んでいくような感覚。
やがて誰の声も、何の音も聞こえなくなって、随分と穏やかに、私は神様から死を与えられたようだった。