僅かに唇を噛んで、伸ばした指を引っ込めて。雫は、初めて「ほんと」を私たちに共有してくれたのだと思う。


「一人でも別に大丈夫って、意地張ってた。私のこと理解してくれない友達なんていらないしって、今の今までずっと――でもさ、」


でもさ。友達って、めっちゃ楽しいじゃん。
芯のある彼女の声が、そう言う時、少しだけ震えていた。


「知らなかったー。後悔した。もっと早くこうしてれば良かったなって、思った。もっと早く、みんなと、……遥香と友達になってれば良かった」


雫が顔を上げる。目線の先に、近江くんがいる。


「ね。近江だってさ、そう思うっしょ?」


揺れた眼鏡の奥の瞳が、透き通っていた。彼が縦に頷いて、肯定の意思を伝える。

それを見た時、嬉しくて、嬉しくて、涙が出た。間違いなく、私の人生で一番幸せな涙だと思った。

ず、と鼻を啜る音が聞こえる。私じゃない。それは、隣に座る、薫だった。
どうして、薫が泣くの。なんて、そんな陳腐な質問はできなかった。だって、私のために今日まで頑張ってくれたのは、何より誰より、薫だから。

私の一番の親友。たった一人の、親友。
彼女が落とす涙を、一粒一粒、見ていた。薫が唇を震わせる。その唇が、告げる。


「行こう。遥香の、お墓に」