霧島くんと近江くんはやっぱり黙ったままだったけれど、彼らの瞳の温度が、薫の言葉に同意していることを表している。
薫は今一度、力強く「雫のせいじゃない」と言い聞かせるように繰り返した。


「ううん。だって、……だって私も、最初は、そう思ってたんだよ」


自身の手の甲に視線を落として、雫が息を吐く。


「適当に寄せ集めただけじゃんって。一人でいるから可哀想って思われてんのかな、とか、思ってたよ」

「雫、」

「薫がそんなつもりで言ったわけじゃないっていうのは、今はちゃんと分かってる。遥香の、ためだから」


正直に打ち明けて、雫は随分と優しい顔で笑う。

さっきの人たちは中学校の頃のクラスメートで、当時からあんな風に嫌味を言われていたのだと、彼女は静かに教えてくれた。
派手な見た目のせいもあってか、雫は常にクラスの中で浮いていたらしい。慣れっこだから別に気にしてない、と彼女自身は強かった。


「好きな自分でいて何が悪いんだろって、本気で思ってたからね。今も思ってるけど」


雫が手を指の先までピンと伸ばして、ちょっぴり恥ずかしそうに目を伏せる。
長く伸びた爪に、ラメ入りのピンクのネイル。彼女の、アイデンティティーだ。


「でも、ほんとのこと言うとさ。私はずっと、友達が欲しかった」