「海だ――――――!」


目の前に広がるそれに、薫が清々しいまでの声量で両腕を広げる。

雲一つない晴天。地平線はくっきりとしていて、空より海の方が濃く青かった。水を掬えば透き通っているはずなのに、集めるとこんなに青いなんて不思議だ。


「あっつ……」


目を細めながら呟いた雫が、陽光を遮るように自身の腕を挙げる。


「いやー、ほんと、あっついな!」

「今日の最高気温、三十四度」

「言うなよ、余計に暑くなるから」


霧島くんと近江くんがそんなやり取りをしつつ、砂浜を歩いてきた。日焼けを気にする女子とは違い、全身に太陽を浴びる二人は、それでもどことなく嬉しそうだ。

私がこの夏にやりたいことの七つ目は、「海に行くこと」。少し遠いけれど、電車を乗り継いでみんなとここへやって来た。
実は、私のおばあちゃんの家がこの近くにある。小さい頃はこっちに住んでいて、私が小学生になる年に、家族でいま住んでいる街へ引っ越したのだ。


「も~~~、早速着替えてきていい? 異論なし? 暑すぎて耐えられないんですけど」

「おー。じゃあ俺らも着替えてくるか」