この夏、やり残した10のこと



まじで? と、霧島くんが興味深そうに瞬きをした。四十五度を探すように、彼はまだ火のついていない線香花火を持って、手首を捻る。

もう一度全員が一本ずつできるくらいには本数があったから、そのまま二回戦に突入した。


「おー……なんか確かに、さっきより長かった、かも」


しばらくして、近江くんとほぼ同時に火玉を落とした霧島くん。その隣で、薫が「見て!」と声を上げる。


「私と雫のやつ、まだ結構元気!」

「あ、」


そんなことを言ったそばから、落ちた、と雫が呟く。


「え、私が一位? やったあ」


薫のはかなり長寿で、その後も弱々しく光りながら、ゆっくりと萎んでいった。

残る線香花火はあと二本。バースデーボーイだから、という理由で近江くんに一本、それからジャンケンで勝った霧島くんにもう一本が託された。


「うわ、俺のめっちゃ火力強いんだけど。元気すぎね?」

「落ちやすいから気をつけとけ」


近江くんの予言通り、霧島くんが持っていた線香花火は、比較的大きく火花を散らした後、すぐにぽとりと息絶えてしまった。


「早っ! ちゃんと斜めに持ってたのに」