ろうそくがだいぶ短くなってきた頃、花火も粗方やり終えてしまった。
最後に残ったのは線香花火。否、残った、ではなく、残した、と言った方が適切だろう。
「今あんまり風強くないし、いいかもね」
雫が言いつつしゃがみ込む。彼女の指先が、線香花火の先についている、薄いピンクのひらひらを弄んでいた。
「誰が一番長く保たせられるか競争だなー」
「ベタすぎるけど、人数いるとそうなるよね」
みんなそれぞれ一本ずつ細い火薬を握り、ろうそくに近付く。
じんわりと優しい火の玉が出てくれば、あとは静かに落ちるその時まで、黙って待つだけだ。
普通の花火がぱちぱちなら、線香花火はしゅわしゅわ、だと思う。微炭酸みたいな柔らかい音を立てて、散った火花が空気に溶けていく。
結果からいうと、一番最初に脱落したのは薫だった。そして最後まで残ったのは近江くんだった。それも、彼は圧倒的に誰よりも長く火の玉を所持していたのだ。
「近江ぃ、何か小細工した?」
「は?」
「だって近江だけめっちゃ長かったじゃん!」
口を尖らせる薫に、チャンピオンの近江くんが「持ち方だよ」とため息をつく。
「真っ直ぐじゃなくて、斜めに……四十五度くらいに傾けた方が落ちにくい」



