少し、照れ臭そうだな、と思った。でも近江くんの笑った顔は、想像よりずっと柔らかくて優しくて、それを見ることができて良かったとも、思った。
「うっわ、近江が笑ったとこ初めて見た。いいじゃん、近江クン、そっちの方が可愛いよ」
「は?」
「凄むな凄むな」
薫が調子のいいことを言って、近江くんを怒らせている。だけれど、場の空気はさっきより幾分か和らいでいて、心地良ささえ覚えた。
「近江、おめでとー」
「おめでとう!」
「おめでとう」
薫、霧島くん、雫。それぞれ順番に祝福の言葉を投げかけて、夏の夜、暗い中に心の一番奥が明るくなるような空気が広がる。
おう、とか何とか。近江くんは小さく首を縦に振って、やっぱりちょっとだけ恥ずかしそうだった。
「じゃ、この花火は近江に捧げまーす」
さっき雫に「ケーキに刺すやつみたい」と言われていたスパーク花火を一本。薫が火をつけて宣う。
ティロン、と電子音が響いた後、霧島くんはスマホを掲げたまま口を開いた。
「はっぴばーすでーとぅーゆー、ほらみんな歌うぞ」



