「てか、みんなの誕生日いつ?」
霧島くんが唐突に問うた。
彼が燃え尽きた花火を、バケツの水に浸す。じゅ、と静かに火花の抵抗する音が響いた。
「私は六月」
答えた雫に、薫が「私は五月」と続く。
「わ、私は十月だよ」
流れに乗って私もそう伝えると、霧島くんはのんびりと口元を緩めた。
必然的に、まだ口を割らない残りの一人へと視線が向く。
「近江は?」
「今月」
「えっ、まじ? いつ?」
ワントーン上がった声で促す霧島くんに、近江くんが渋々といった様子で打ち明けた。
「……八日」
「八日って、」
みんなで顔を見合わせる。そして次の瞬間、誰ともなく叫んでいた。
「今日じゃん!」
そう、八月八日。まさしく今日。
何それー、と薫が肩を竦める。
「言ってよ、水臭いなあ」
「自分から言うのも違う」
「でも言わなきゃ誰も祝ってくれないじゃーん」
近江くんは自身の頭を軽く掻いた後、やや戸惑ったように目を伏せた。
「俺の誕生日祝いたいやつなんて、いないだろ」
それから彼はずり下がっているわけでもないのに眼鏡を押し上げて、言葉を続ける。
「そのためだけにわざわざ夏休み中に会うやつも、連絡取るやつも、誰もいない」