淡泊な回答を寄越した雫に、霧島くんは「じゃあこの真っ直ぐのやつ」と花火を一本手に取る。ピンクの持ち手に、黄色や水色の紙が鮮やかだ。

結局、最初はみんな揃ってそのススキ花火に着火することにした。
先陣を切るのは霧島くんだ。花火の先端をろうそくに近付けて、しゅう、と一拍遅れてから火花が飛び出す。

瞬間、意図せず肩が跳ねた。
純粋に、びっくりしたのだ。手持ち花火って意外と勢い良く発光するんだなと、これはまた一つ新しい発見である。

それを見るとほんの少しだけ怖くなって、最初の一本目は薫と一緒に持つことにした。
目の前で真っ直ぐ散っていく光の粒が、オレンジ、白、青、と移り変わっていく。


「おー、きれいきれい」


その感想には概ね同意だけれど、呑気な薫とは対照的に、私の腰はまだちょっぴり引けていたと思う。

でも、本当に、綺麗だ。
こんなに近くで、手元で、煌々としているのが不思議なくらい、何か生命を宿したかのように、火花は力強く吹いている。


「これ、誕生日のケーキの上に刺すやつみたい」


いつの間にか二本目を楽しんでいたらしい雫が、自身の持っている花火を僅かに掲げてそんな比喩を漏らした。
煙のない火花がぱちぱちと四方八方に飛んでいる。彼女が言うように、料理の演出にも使われるような類いの光り方だ。