背の低いろうそくに、ライターで火が灯される。幸い、今日は風も強くなく、立ち上がった炎はゆらゆらと穏やかに揺れていた。


「よし、ついた」

「水の準備も完了~。じゃあ早速やりますかあ」


ぺりぺり、ぐしゃ、ばりばり。
横から聞こえてくるのは、雫と近江くんが作業している音だ。買ってきた手持ち花火の台紙やらテープやらを剥がして、ばらしているのだろう。

私がこの夏にやりたいことの六つ目は、「花火をすること」。私の家の近くの河川敷で、みんなと遊ぶことになった。


「花火を見たい、じゃなくて、やりたいっていうのが遥香らしいよね」

「……だ、だって、大きい花火は、病室からでも見えるから」


薫の言葉に、咄嗟に言い返す。

病院にいても、場所によっては窓から眺めることができた。看護師さんや他の入院患者の人と一緒に花火大会の気分に浸ることは、そう難しくなかったのだ。
でも、みんなが手軽にやるような手持ち花火は、逆に巡り合う機会がない。一度でいいからやってみたいなと、常々憧れていた。


「一発目って何からやるか迷わね?」

「どうせ全部やるんだから、悩む必要ないと思うけど」