この夏、やり残した10のこと



と、霧島くんの前の席に座っていた男子が振り返った。その人とは一年生の頃からずっとクラスが同じだけれど、私は彼のことが少し苦手だ。


「え? 何が?」

「出雲さんはさー、体弱いから、いっつも学校いないんだって。可哀想じゃん?」


へらへらと笑いながら、可哀想、という単語を放った彼が、私に視線を移す。
その、目。面倒なクラスメートを見るかのような目を、いつも彼から向けられていた。

体が弱いから。休みがちだから。いつも教室にはいないから。
自分で自分を慰めるために言い訳を並べるならいいのだけれど、他の人から言われるのは嫌だった。最初から線引きをされて、よそよそしく振舞われて。自分が酷く惨めな人間なような気がしてしまう。


「そうなの? 出雲」


霧島くんが問うてくる。
嘘をつくのも違うな、と諦めて、私は首を縦に振った。


「……明日から、また病院にいなきゃいけないから……」


視線から逃れたくて、再び俯く。机の木目。私が今まで何度も、何度も何度も、見てきた景色。


「へーえ。じゃあ俺、めっちゃラッキーじゃん」