この夏、やり残した10のこと



どうやら、私が彼の名前を覚えていないと思ったらしく、改めて丁寧に名乗ってくれた。
クラスメートの顔と名前はきちんと覚えるようにしている。そうしないと、本当に一人、取り残された気持ちになるから。

そうでなくとも、霧島くんのことは印象に残っていた。自己紹介では明るくはきはきと喋り、いまテレビによく出ている芸人のモノマネまでしていたからだ。


「……あ、だ、大丈夫、ありがとう。緊張、してるだけだから……」


いい加減返事をしないと、せっかく話しかけてくれているのに失礼だ。そう思って必死に口を動かす。緊張していたのは、本当に本当だった。


「はは、緊張してんの? 三年なのに」


クラス替えも三回目。一年生の頃から毎日普通に登校していれば、それなりに友達や顔見知りも増えて、三年生になる頃には、知らない人の方が少ないくらいなのだろう。
でも私は今日を含めて、学校に来た日はまだ二桁もいっていない。わざわざそれを打ち明けて変な空気になるのも嫌だったので、黙って頷いておく。


「おい斗和ぁ、お前そういうこと言うなよ」