あ、と薫が少し得意げな顔をする。
「それが十二星座と関係するってこと?」
「いや、そのうち三つ――獅子座と蟹座、射手座は関係ある。あとはまた別の話だ」
十二の功業というのは、主に怪物の退治だったらしい。ヘラクレスが倒した怪物が星座となり、空に輝いている――それが獅子座と蟹座なんだとか。
そして近江くんが言っていた射手座の話が、これから始まるようだ。
「十二の功業の四つ目で、ヘラクレスはケンタウロスに助けを求める。怪物の捕獲が済んだ後、ヘラクレスはケンタウロスたちが大事にしていた酒を飲んでしまう」
「ケンタウロスってあれだよな? 上半分が人間で、下半分が馬のやつ」
記憶を掘り起こすように斜め上を見つめながら、霧島くんが確認する。
「ああ、そうだ。ヘラクレスとケンタウロス族の争いが起こって、その時ヘラクレスの放った毒矢がケンタウロスのケイロンに刺さった。不死のケイロンは、毒矢で死ねず、ただ苦しみ続けることしかできなかった」
耐え切れなくなったケイロンは、ゼウスに頼んで不死の力を放棄し、死んでいったという。
「ケイロンの死を悼んで天に上げられたのが、射手座だ」



