呆れたように息を吐いた近江くんが、「獅子座は春の星座だろ」と眉根を寄せる。


「え、まじ? 七月八月の星座なのに?」

「誕生星座はそもそも、生まれた日に太陽がどの星座のところにいたかっていう意味だ。毎年自分の誕生日の時はその星座が太陽のところにあるんだから、夜に探しても見つからない」

「へえ~~~、それは知らなかった」


感心したように相槌を打つ霧島くん。私も知らなかった。こっそり心の中でメモを取る。


「私も知らんかった~」

「私も」


正直に声を上げたのは薫と雫で、近江くんが怪訝そうに眼鏡を押し上げた。


「いや……季節ごとの星座とか、中学で習っただろ」

「そんなの忘れましたー」


薫は自身の頭をぽこんと叩いておどけてみせたけれど、雫の方は何やら興味を持ったらしい。空を見上げてじっと目を凝らしている。


「近江的に、夏の星座は何がおすすめ?」


手すりに寄りかかり、静かに雫が問うた。
彼女が実はそこまでとっつきにくくない人だということは分かってきた。派手なメイクも服装も相変わらずで、それでも薫や私とは普通に話してくれる。近江くんへ話しかけることは貴重だから、少し驚いたけれど。


「……俺が好きなのは、射手座の話」