「腕を前から上にあげて大きく背伸びの運動から――はい」


いち、にー、さん、し。
ラジオから流れる朗々とした声に合わせて、ぐん、と体を伸ばす。

霧島くんと薫は何の動きをする時も、めいっぱい縮んだり伸びたりしていた。一方で雫と近江くんはやや気怠そうに指示に従うだけだ。こんなところにも各々の性格が垣間見えるようで面白い。

私がこの夏にやりたいことの三つ目は、「ラジオ体操に行くこと」。
何で高校生にもなって、とか、わざわざ早起きしたのにそれかよ、とか、みんな――主に雫と近江くんだけれど――からの文句を獲得しながらも実現した。

周りで元気に体操をしているのは、ほとんど小学生だろう。それと近所のおじさんやおばさん。犬の散歩中だったのか、リードを持ちながらすぐそばのベンチで休憩している人もいる。
公園に現れた私たち高校生の集団はやはり異質だったらしく、しばらくは注目の的だった。


「深呼吸――いち、……さん、し、」


時間にしては僅か三分程度。考え事をしていたらあっという間に過ぎてしまうし、ぼうっとしていても気が付けば終わっているような短さである。
ゆっくり空気を取り込めば、ピアノの伴奏が少しずつ遅くなっていって、最後の一音を告げた。

終わるや否や、首からカードを提げた子たちが列を作る。スタンプをもらうためのそれだと気が付くのに、数秒もかからなかった。


「こんにちはぁ」