朝の六時。澄んだ空気に深呼吸をする。
まだ白っぽい空と、静かに流れる雲。黙って眺めているだけで穏やかな気持ちになるけれど、ずっとそうしているわけにもいかない。

私は止まっていた足を再び動かし、約束の場所へ急いだ。


「あ、きたきた。おはよー」


かつて通っていた中学校の校門前。
既に薫が到着していたようだ。彼女に応えようと、手を挙げた時。


「お――近江くん……!」


唐突に横から姿を現した彼は、私の隣に並んで歩き始める。すぐ後ろにいたんだろうか。全く気が付かなかった。
驚いて一瞬立ち止まった私に目もくれず、近江くんはそのまま薫の元へと近付いていった。


「まだ雫と霧島きてないんだよねー。てか、こんなに早く起きたの久々だわ」


伸びをしてそう述べる薫はノースリーブを着ていて、とても涼しそうだ。
近江くんは僅かに眉根を寄せると、面倒そうに口を開く。


「こんな時間から何しに行くわけ」

「えー? 何ってそんなの――あ、雫だ。おーい」


私と近江くんが歩いてきた方とは反対側。ショッキングピンクのティーシャツが目に鮮やかだ。胸元まである髪を一つにくくって、雫は瞼を擦りながらこちらへ向かってきていた。


「おっはよー、雫ちゃん。元気?」

「……眠い」