大袈裟に膨れてみせた霧島くんは、すぐに晴れやかな笑顔に戻る。
彼と近江くんはしばらくの間、ソフトクリームのフレーバーについて真剣に討論していたから、それがどうにも可笑しくて、吹き出さないように堪えるのが大変だった。


「ちょっと男子ー、真面目に食べてよ」


早々に食べ終わったらしい薫が腕を組み、二人の言い合いに水を差す。


「合唱コンクールの女子みたいな言い方やめろ」


てか真面目にアイス食うってなんだよ、と霧島くんが肩を揺らした。彼はコーンスリーブを剥がすと、そのまま小気味いい音を立てて食べ進める。

私はソフトクリームのコーン部分が苦手だ。せっかくアイスを食べて喉がひんやりしているのに、全部ぱさぱさした感覚に上書きされてしまうから。

みんな食べ終わってゴミを捨てたら、それが楽しい時間の終わりの合図みたいで、少しだけ寂しくなった。


「あっち~~~」


アスファルトの吸い取った熱が、下から私たちを炙ってくる。

霧島くんは自転車を押しながら前方を歩いていた。青い車体に光が反射して、数種類のブルーを試作中のパレットみたいに、境界線がぼやける。
彼の後頭部を太陽が無慈悲に照らして、首筋にまた新しい汗が浮かんでいた。