深呼吸をする。
わたしだけ、目が覚めませんように。
この子の命の代わりに、わたしが死ねますように。

酸素マスクを着けられる。
点滴の管の隙間から静脈麻酔が入れられる。
ぴりぴりと痛い。

寝ないで。
お願いやから眠らないで。
眠ってしまったら、この子とはもう会えない。

「……ごめんなさい」
遠のく意識の中で、かすかに声に出した最後の言葉。
伝う涙がこぼれ落ち、わたしは深い眠りについてしまう。

生きていてごめんなさい。
死ねなくてごめんなさい。
生まれてきてごめん。
生まれてしまってごめんなさい。

もう2度と生まれてこないから、わたしの代わりにあなたが幸せに生きていけますように。
幸せな家庭のもとに生まれてこれますように。
たくさん笑って、たくさんお母さんやお父さんに寄り添ってもらってね。
大好きだと、愛しているよと言われて、安心して眠れて、あなたの期待や夢や希望を馬鹿にしたりしない家族のもとに産まれてね。
そして歳をとって、看取られるとき、たくさんの家族の中で、笑って死ねますように。

産まれてこれて良かったって思えますように。
生きていて良かったって思えますように。
お父さんとお母さんを選んでよかったって心から思えますように。

わたしの子としてこの世に生まれてこなくて良かったって思えますように。