翌朝、大矢さんは会社へ。
わたしは「中絶前の検査」と嘘をついて病院へ向かった。

今日で最後。
今日でおしまい。

大矢さんは知らない。
今日が中絶手術当日だということ。
中絶には必ず中絶相手の同意書がいるが嘘の住所と自宅の電話番号を書いて提出した。
「体調はいかがですか?」
「はい、大丈夫です」
簡単な問診に受答えし、産婦人科の診察室を出た。
今日はエコーでお腹の子を見ない。
見るわけがない。
わたしの周期での中絶費用は半日の入院費、手術費、当日の診察費込みで15万円。
誰の顔も見たくなかったわたしは1人部屋の病室を選んだ。
11時に手術が始まるが、10分、15分置きにオペを担当する先生たちが病室にまで挨拶しにきてくれた。
こんなわたしに。
ただ窓の外を眺めて時間が過ぎるのを待つだけだった。


♪〜♪〜♪


【病院終わったら、連絡して】
大矢さんから連絡が入る。
身体は気遣ってくれる人だった。

わたしが決めた。
誰の意見も取り入れない。
参考にしてない。
わたしが1人で中絶することを決断した。

午前11時35分。
わたしは手術室に入る。