麻由が彼女の死を受け止めるにはそれから5年の月日を要した。

20歳の頃に書いた未来への手紙を握りしめ、30歳になった麻由は地元に帰省した。

子どもたちは実家に預け、花とお菓子を買い、ある人の家へ向かった。

インターホンを鳴らす指が震える。

「…あ、麻由ちゃん………?大人になったね。どうぞ入って」

朝日の父親が玄関で迎えてくれた。

「ここが朝日の部屋です。朝日と思う存分話してあげて。麻由ちゃんが来てくれて、朝日喜んでるわ。来てくれて本当にありがとう」

2階に上がり、朝日が使っていた子供部屋に案内される。

麻由はここで朝日が亡くなったんだと思ったら、怖くなる。

朝日の部屋は壁紙が剥がされ、床も綺麗にリノベーションされていた。

仏壇に目を向ける。

飾ってあった写真は朝日の保育園の頃の写真だった。

「朝ちゃん、昔っから、小さいときから可愛かったんですね………」

飾られている写真は幼少期の頃のものばかりだった。

小学3年生と書かれた写真たて以降の写真が無かった。

「朝日の小さい頃の写真しか無くて………かなり前から撮ってなかったんやなあって気づいて……もっと撮ってあげればよかったなぁって…麻由ちゃん、持ってる?」

「はい………何枚か現像したのが実家にあるので後で持ってきますね」

「ありがとう。そしたら1階にいるので、また声かけてください」

「………はい」

朝日の父親が部屋から出ていく。