5歳になる長女が今日の夕食は「ハンバーグが良い」と言うから「じゃあ一緒に作ろうね」なんて言いながら副菜は何が良いか考えているときだった。

忙しなくすぎていく毎日を過ごしているけれど、この上ない幸せを噛みしめ、育児をしながら何の変化もなく手一杯になりながらも毎日を生きているときだった。

「ママぁ…」

「………」

「ママぁ！！！」

「はいはい！！…ごめん、どしたの？」

「あさちゃんからお電話だよ」

長女の声に急かされ、スマホを手に取る。

「え…？」

半信半疑のまま、通話ボタンを押した。

「はい、もしもし」と電話に出ると、発せられた声は思い描いていたひとからでは無かった。

『あ……麻由(まゆ)ちゃんですか？』

「…はい…。…どちら様ですか…？」

『…あぁ。………朝日の父です…』

『朝ちゃんのお父さん………』

震える声で答えた。

何が返ってくるかは地元に住む母親から聞いていた。

ニュースにだって取り上げられていたから。

もう知ってる。

もう気づいてる。

ただ信じたくなかったから、考えないようにしていただけ。

残酷なニュースと結果は東京に住むこの女性の耳にも入ってきていた。

「……実は………朝日が亡くなりました…」

その言葉にグッと唇を噛み締める。

現実なんだと思い知らされた。

中学から今も仲が良かった大事で大好きな親友が死んだ。

この世からいなくなってしまった。