思考回路が停止する。

大矢が彼女の死の知らせを受けたのは、彼女が発見された翌日の午後9時半頃。

仕事終わりに駅ホームにある喫煙所で一服しようとしたとき、同期の男から連絡を受け、知ることになる。

大矢はすぐさま、電話を切り、ある人の番号に電話を掛けた。

出ろ……。
出てくれ、頼む。

コール音がひたすら鳴り続け、出る気配がない。

「朝日………」

彼は涙を流し、その場で声を荒げて泣いた。

この男は彼女が新卒で初めて入社した会社の元上司であり、妻子ある身でありながらも彼女とは不倫関係だった過去を持つ。

数年前に不倫関係は解消しており、関係を絶ってもうすぐ2年になろうとしていた。

彼女の死をきっかけに隠されていた真実が明るみになり、もしかしたらと疑いの眼差しで見ていた者たちの確信にとどめの矢が刺さる。

その後、この男性は勤めていた会社にある噂が広まり、居づらくなり、退職届を提出し、自身の父親の会社を手伝うことになる。

純粋な女が悪い男に弄ばれた末に起こした、
不幸な結末という見方も出来れば、

男に溺れて避妊もせず、
子どもが出来たら自分の意思で中絶している自堕落な女という捉え方をする者もいた。