「幻夢。今日は送ってくれてありがとう」

「どういたしまして。でも騎士(ナイト)がお姫様を送り迎えするのは当然のことですから!」


「幻夢は騎士というより忠犬って感じがするわ」

「姉貴、今なんて?」


「ただの独り言。じゃあ、また明日」

「はい!」


「帰り道には気をつけて」

「わかってます!」


「それと……」

「どうしました?」


「やっぱり、なんでもないわ」


聞こうと思ってやめたのは舎弟たちのこと。


なにを今更聞く必要があるの?

私から離れていったくせに。


幻夢は私が聞けば簡単に答えてくれるだろう。だけど、どんな答えが返ってきても私が闇姫に戻ることはない。それにあの場所は今の私にとっての居場所じゃないから。


私が闇姫をやめた、卒業した理由だって幻夢は聞かない。闇姫として復活しろと無理強いもしない。

これは踏み込んではいけない境界線。だから私も安易に触れてはいけない。入ってはいけないんだ。私はもう闇姫ではないのだから。


ただの高校生。幻夢は元舎弟であり、今はただのトモダチなんだから。