捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで

奏士さんの言葉に、誰もが息を呑んだ。
三栖との取引がなくなるというのは、利益的にも郷地物産には痛手だ。さらにその理由についても、虚実の垣根なく噂されるだろう。郷地物産の信用はがた落ちとなる。
奏士さんはわずかに口調を和らげ、言った。

「あなたのご両親への制裁にはそれで充分にはならないか?……あなたは恋人とお腹の子と早々に沈む船から逃げ出せばいい」
「京太さん」

摩耶さんが涙目で京太を見つめる。京太は頷き、私たちに頭を下げた。

「そうします。里花、本当にすまなかった」

私は京太の前に立った。一発殴ってやろうかとも思ったけれど、非力な私では無駄だし、そんなことしたこともないので無茶はやめておく。かわりに笑って、夫だった人を見あげた。

「京太さん、私と離婚してください。……ここでちゃんと区切りをつけましょう」
「里花……俺は」
「私たち、夫婦になるべきではなかった。だけど、今ならやり直せます。別々の道を行きましょう」
「ああ。里花、長い間苦しめてすまなかった」

京太と摩耶さんは頭を下げて帰っていった。