「あら、由朗さん。今日はお出かけじゃなかったんですか?」

先日の花火からすっかり打ち解けたようで、沙織さんが気軽に会話する。

「伯父たちのゴルフに付き合ってね。早朝からだったから、割と早く終わったよ」
「由朗……伯父さまたちに何か言われてはいない?」
「ああ。姉さんは気にしなくていい。あの人たちはいつも言いたいことを何も考えずに口にする。俺たちは本家を守っているし、宮成商事も好調だ。文句は言わせないよ」

頼もしいことを言ってくれる由朗に、やはり私は凝り固まった考えでいたのだなと痛感した。

「由朗さん、格好いいこと言うんですねえ。でも、ちょっとシスコンかしら」

沙織さんがからかうように言い、由朗がにやっと笑って返す。

「沙織さんだって功輔くんにべったりじゃないか。ブラコンなんじゃないか?」
「功輔が私にべったりなんです。双子ですからしょうがないですけど」

ふたりのやりとりを見ていると、それだけで心があたたかくなる。ふふと笑ってしまうと、由朗と沙織さんが私の顔を見た。

「やっぱり里花さん、おうちに戻って表情が柔らかくなってますね」
「姉さんが昔みたいに笑ってくれて嬉しいよ」
「そう?」

私は両の頬を押さえた。
私はやり直せる。ここからもう一度。私には家族がいて、大事な人たちがいる。自分を大事にしないことは、私の大事な人たちを傷つけること。もう間違えない。