捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで

こうして、私は実家での暮らしをスタートさせた。
宮成商事にも復職した。籍は抜けていないけれど、名前は宮成里花としたので、多くの社員は私の離婚を悟っただろう。それでいいと思う。
これは必ず離婚するという決意だ。
総務部に戻り、懐かしい人たちに囲まれて日々仕事をするのは本当に癒される。

思えば七ヶ月マンションにひとり縮こまって生きてきた。人間はひとりきりでいると心が固まるのだ。誰かと関わりを持つことで、思考は巡るようになるし、生きることが楽しいと思える。京太のマンションにいた私は、ひとりきりで思考放棄の状態にあったのかもしれない。
今、息を吹き返した私は、毎日新入社員より夢中になって仕事をしている。

京太からは驚くべきことにただの一回も連絡はこなかった。奏士さんを訴えるなどととんでもないことを言ってきたというのに。京太の弁護士から、うちの両親に離婚には応じないと連絡がきている。
おそらく京太自身は私と離婚してもいいはずだ。
ただ彼は両親に逆らえない。彼の両親は離婚を外聞が悪いと思うだろうし、宮成家の血筋にはまだ用がある。私に逃げられるわけにはいかないのだ。