捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで

私の不安そうな顔で、何を言い対価は伝わったようで、奏士さんは答える。

「大丈夫、向こうは訴えると息巻いているんだから、俺ももう関係者だ。それに、ほらこうしてみんな揃っているから、ふたりきりじゃないよ」

そんなことを言うけれど、相手は火にないところに煙をたてる人なのだ。私のためにひどいめに遭わせてしまって申し訳ない。

「おじさん、おばさん、里花さんとは恥ずべき関係にはありません。里花さんの離婚が成立するまでは軽率な行動はとりませんので」
「もちろん、奏士くんを信頼しているよ」

父が言い、由朗も頷いた。

「奏士くんが姉さんを説得して連れてきてくれなかったら、姉さんは今もあの男の家にひとりぼっちだったんだ。迷惑をかけてすまないとも思うけれど、それより感謝の気持ちでいっぱいだよ。奏士くん、本当にありがとう」
「由朗は本当に大人っぽくなったなあ。宮成商事は安泰だね」

奏士さんが昔みたいに由朗の頭を撫でる。私たちが兄弟みたいに過ごしていた頃を思いだし、嬉しいような切ないような気持ちになる。

「さて、ここで皆さんに相談です。少しだけ里花とふたりで話したりしたいので、皆さん、見張っていてもらえますか?」

奏士さんがおどけた様子で言った。
沙織さんがあははと笑い、功輔さんと門司さんに小突かれている。

「花火を持ってきたのでしたいなあ、と」