捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで

「郷地家は、まず京太氏の不倫はなかったと主張しています。愛人の妊娠もあり得ない。京太氏は仕事で多忙、自宅に帰れない日が多く、精神的に不安に陥った里花さんが愛人がいるという妄想をしたのだろう、と」

私は手がぶるぶると震えるのを感じた。強い怒りを覚える。
よくもそんなことが言えたものだ。
オープンに愛人を持たせておいて、不都合が生じればすべてなかったことにし、私のせいにしてしまうなんて。

「郷地京太氏は、奏士社長を前に言いました。里花さんが家に戻れば、慰謝料請求は取り消すと。奏士社長ははっきりとおっしゃっていましたよ。事実無根の不貞行為を持ち出すなら、こちらも名誉棄損で訴える覚悟がある。友人として里花さんを郷地家には返すことはできない、と」
「奏士さんが……」
「奏士社長は、何があってもあなたを守るつもりです」

奏士さんを巻き込んでしまったと思うのと同時に、彼がいかに私のことを考えてくれているかと伝わり、胸が熱くなった。涙をこらえ、頷く。