「夫に……出て行けと言われました」
「え?」
「夫、京太には複数の愛人がいるのですが、……そのうちひとりと私のことで喧嘩になり別れたそうで……。忌々しいから出て行け、と」

説明する語尾が小さくなる。口にしておいて情けなく、恥ずかしくなった。
見れば、目の前の三人は言葉を失っている。目を見開き信じられないといった表情だ。

「え……待ってくれ。里花の夫には、公認の愛人がいるのか? 何人も?」

奏士さんが戸惑った口調で尋ねてくる。奏士さんは先日、パーティー会場で夫の京太を見ている。そのとき夫は愛想よく会話し、私を愛妻扱いしていたのだ。

「愛人の存在を知ったのは結婚後です。最初は隠していたのですが、すぐに堂々と会いに行くようになって。誰とも別れる気はない、と言われています」

三人が疑問とも憤りともつかない顔をし、言葉に迷っている。それはそうだろう。私も、どうしてこんなことになっているのかわからない。

「つまり、その愛人のひとりと別れて八つ当たりされたのか?」
「……私と結婚してから上手くいかなくなったそうです。……だから、私のせいだと」

三人が絶句する。その沈黙がいたたまれないので、私は慌てて付け足した。

「あの、でも暴力を振るわれたということはないです」
「当たり前だ」

奏士さんが鋭く言った。