「産むと言って聞かないものだから、家を与え金を握らせて黙らせることで話がついてるんだが。隠し子なんて噂が流れたら厄介でね」
「まったく、外聞の悪い。せめてあなたが先に妊娠していれば!」

義母の苛立ちはそれらしい。本妻より先に愛人が妊娠してしまったことを恥じているのだろう。それなら最初から京太の愛人を黙認などしなければよかったのに。

「相続は放棄させるし、里花さんが産む子どもが郷地の跡取りなのは間違いない。今日呼び出したのは、早く郷地の跡取りを作ってほしいということだ」

義父がものものしく言った。場をしばし沈黙が支配する。
愛人を囲い妊娠させる男と早く子どもを作れ。この人たちはそう言うのだ。
私は顔をあげ、義両親を見つめた。
ここで言わないでどうする。自分を叱咤する。

「京太さんと離婚したく思っています」

義両親の表情にぴりっと緊張感がはしった。

「京太さんはその摩耶さんと結婚すべきです。それが産まれてくる赤ちゃんのため。……京太さんとは、結婚前から今日にいたるまで性的な接触は一切ありません。それでは子どもは産まれません」
「それはあなたの努力不足でしょう!?」

義母が激高して怒鳴る。私は咄嗟に鋭い視線で義母を睨み返していた。