「里花は俺が嫌いか?」
「嫌いなわけ……ないじゃないですか」

私はうつむき、かぶりを振った。

「子どもの頃から、奏士さんは私の憧れの人です」

初恋の人です。私も十五歳の年にあなたを約束で縛れないと諦めたんです。
だけど、それを言ったら私は戻れなくなる。奏士さんも。

「奏士さん、主人のところへ戻ります。まだ、私は逃げ出せないんです」
「それはいつかあの男から離れるという意味か?」
「……わかりません」

包み隠さない本音だった。私は奏士さんに頭を下げる。

「何かあったら、絶対に連絡してくれ」

奏士さんと連絡先だけ交換をし、私はパーティー会場へ戻った。

奏士さんは本気だ。
私は困惑しながら、激しい喜びを感じていた。