捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで

その日、三栖グループのパーティーに呼ばれた私と京太は、帝東ホテルの会場へやってきていた。

京太はやや緊張の面持ちだ。なにしろ、先月奏士さんと私が偶然再会したのをきっかけに呼ばれたのであって、本来は京太が出席するパーティーではない。
郷地物産も三栖グループ本体である三栖株式会社の数多ある取引先ではあるが、今日の出席者を見れば、少々場違い感があった。パーティーに招かれているのは、名だたる大企業のトップたち。大銀行の頭取や与党大派閥の代表もいる。
子どもの頃から父のお伴でこういったパーティーには顔を出していたので、私は懐かしい気分で周囲を見渡した。

「姉さん」

声をかけてきたのは弟の由朗だった。今日は父の名代で参加するとはきいていた。由朗の前で暗い表情はできない。私はぱっと笑顔を作った。

「由朗、久しぶり」
「姉さん、少し痩せた? ……義兄さん、こんばんは」
「ああ、由朗くん、こんばんは」

京太は知っている顔があってホッとしたような、同時に嫌なものでも見るかのような皮肉げな顔をした。由朗も、数度しか会っていないのに京太の態度には結婚当初から不快感があるようだ。最低限の挨拶をすると、私の方へ向き直る。

「奏士くんには会った? もうじき挨拶だよ」