捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで

相手にすると面倒だからと黙っていたけれど、こうやってマウントを取りに頻繁にやってこられてはたまらない。
私は受け取ったドレスを包みごと、後方の床に投げ捨てた。背筋を伸ばし彼女を見上げる。

「あなたは下品です。今後、この家への出入りは控えてください。届け物は宅配を頼むようになさって」

私が毅然とした態度を取ったことに驚いたようで、彼女は負けじと声を甲高くする。

「あら、奥様、私はご用事があって参ってるだけですのよ。用事がなければこんなところ」
「ええ、愛人風情が来られるような場所ではありません。立場を弁え、日陰者らしく控えていなさい。今後、私への侮辱は郷地家への侮辱、そして私の実家・宮成家への侮辱と取ります」

わざと気位の高いお嬢様として言い放ち、彼女をねめつけた。

「奥様……」
「あなたの存在を許しているのは郷地の両親でしょう。あの方たちは品性のない女は好かない。両親に反対されれば、京太があなたをどう処するか想像できないのですか?」

京太が両親に逆らえないことは、彼女もわかっている。気圧されたのか、摩耶という女性は「失礼します」と短く言い、乱暴にドアを開閉し出て行った。

嵐が去った。静かになった玄関に立ち尽くし、ふうと息をつく。

「……実家の名前とか、義両親の名前とか、出したくなかったわ」

私は呟き、触りたくもない届け物のドレスを拾い、開けた。