『奏士さん』

奏士さんはいっそう美しい男性になっていた。もとより整った顔立ちは男らしく年を重ね、肩幅も胸板も男性らしくなっていた。涼やかな目元を私のために優しく細めてくれるのはあの頃と変わっていない。

『久しぶり、結婚したと聞いていたよ』

私に話しかけるのが三栖グループの次男であると、京太は最初気づかなかったようだ。私に紹介されてわかりやすく肩を揺らした。

『三栖奏士さん、お会いするのは初めてですね。アメリカで、海外グループ企業の統括をされていると伺っています』
『一応分社化しまして、あちらでは社長の肩書をもらっています。まあ、父と兄の御膝元で自由にさせてもらってますが』
『お父様とお兄様には、うちの郷地物産も大変お世話になっておりまして……』

相手のペースに飲み込まれまいと京太が口調を強くするのを感じながら、私の目は奏士さんばかりを映していた。

奏士さんだ。胸が苦しいほどに高鳴り、息が詰まる。
心を占めているのは久しぶりに会えたことに対する純粋な懐かしさと喜びだった。