宮成里花は、5歳年下の幼馴染だった。
俺が五つの時に生まれた宮成家のお嬢さん。宮成家には礼を尽くせと幼い頃から習っていた俺は、出会った瞬間にこの小さなお姫様を守らなければと思った。
パーティーや会食、互いの家を行き来する中、俺は里花を本物のお姫様のように扱った。俺と手を繋ぎ、よちよちと歩く里花はとても可愛らしかった。すぐに弟の由朗も生まれ、小さな姉弟は、三栖家末っ子の俺にとって弟妹になった。
お喋りが始まればまた可愛らしく、俺はパーティー会場で彼女をエスコートするのが誇らしかった。

「そうちゃん」

彼女は俺をそう呼んだ。あどけない笑顔と頼り切った様子に、俺は里花が本当の妹ならいいのにと思ったのものだ。そうすれば、毎日遊んであげられる。里花のためにサンドイッチを作ってあげられるし、里花が寂しいときは一緒に眠ってあげられる。
なにしろ里花は俺と別れるとき、いつも涙していた。

「そうちゃんと一緒がいいよ」
「ばいばいはやなの」

そう言って駄々をこねる里花を見ると胸が締め付けられるようだった。
どうして俺たちは兄妹として生まれられなかったのだろう。兄妹なら、離れることなく一緒にいられたのに。