「結婚記念日のディナーは来年まで取っておいた方がいいかも」

ちらんと奏士さんを上目使いで見る。他意はなかったけれど、奏士さんがにっこり笑った。

「俺としては親や由朗たちに里衣を預けてもいいけれど、それだと里花が気持ち的にゆっくりできないだろう」
「沙織さん妊娠中だし、由朗のところは駄目。うちの親は喜ぶし、奏士さんのところも喜んではくれると思うけど」

里衣は台風並のパワーあふれる女子なので、丸一日あずけるのは気が引けてしまう。

「それじゃ、三回目の結婚記念日は家にしよう。俺が食事を作るよ。ローストビーフにお酢の効いたニンジンサラダ。里花、好きだろう? あとは里衣とデザートでも買ってきてくれないか」
「本当? 甘えちゃってもいいの?」
「いつも里花には頑張ってもらってるし、たまにはそのくらいさせてくれよ」

どこまでも優しい私の夫。私は彼の頬にもう一度キスをした。

「ありがとう、大好き」
「俺も好きだよ」

頬を寄せ合う私たちに、負けじと里衣がぎゅっと抱きついた。
ひとりぼっちだった世間知らずの私はもういない。私には愛する夫と娘がいて、自分の足で歩む人生がある。
私はきっとこの先も、笑って生きていける。




(おしまい)




※ここまでお読みいただきありがとうございました。
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