捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで

『……摩耶(まや)に会ったのか』

深夜帰宅した京太は、私の質問に舌打ちをした。その顔はもう爽やかで優しい夫の顔ではなくなっていた。面倒くさそうに頭を掻き、ため息をつく。

『京太さん、どういうことですか? 恋人の方たちとまだ関係を持っているなら、それは浮気だと思います』

私は精一杯落ち着いた声音で言葉を重ねた。

『京太さんの妻になるために結婚しました。ですが、これでは夫婦とはいえません。私に至らないところがあれば直します。どうか、女性たちと関係を清算して、私と家族としてやっていけるようお考えいただけませんか?』
『元から、家同士の繋がりだろ、結婚なんて』

京太は呆れた口調で答えた。それは聞いたこともないような投げやりな口調。

『俺は最初の最初から里花に興味はないんだよ。親がおまえにしろと言うから仕方なく結婚した。金はやるし、好きに遊んで暮らしてくれていい。だから、俺のことは干渉しないでくれ』

冷たいばっさりと切り捨てる言葉に私は返す言葉を失った。
優しいのはポーズ。楽しそうにしていたのは演技。彼は彼で我慢して、私と一緒にいたのだ。出会ってから、この数か月間……。

『それでは……離婚した方がいいかもしれませんね』

愕然としながら震える声で言う。
離婚すべきだ。愛を育む余地のない男女が一緒にいても仕方ない。